渡る世間は地雷ばかり

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大学の時の同級生(A)に『自分には韓国の血が流れているのだ』とカミングアウトされた。

カミングアウトという言葉を選ぶと何か重大な秘密を公表するような雰囲気が出てしまうが、そんな深刻な感じではなく、サラッと、本当にサラッと、「今日は和食だったよ」くらいのテンションで言われた。

 

思い出したのは大学生の時の別の同級生(B)である。

彼女は嫌韓で、私が明確に思い出せる発言は韓流アイドルに対して「見たくない」「何で日本に来るんだ」ぐらいのものだけど、それ以外にも色々と言っていた気がする。

 

A自身は日本で生まれ日本で育っているから、自身をどう自認しているのかは分からないけれど、両親や祖父母、自分の近しい人が蔑まれる言葉たちをどんな気持ちで聞いていたのだろうと思うと胸がヒヤッとした。

 

…という話を「意外といるもんなんだね」と大筋をぼかして母にしたら「Kさんのお父さんも韓国の人だって言ってたよ」と返ってきた。

 

これがまたドラマみたいな話で。

Kさんのお父さんとお母さんは籍を入れずに子供(Kさん)を産んだそうだ。だからKさんの国籍は選ぶまでもなく日本なのだけど、お父さんは結構若くに亡くなってしまったから、Kさんの子どもたちは自分に韓国の血が入っているなんてこれっぽっちも思っていないらしい。お子さんの1人はあまり韓国を良く思っていなくて、韓国を下に見た発言をしたりするそうだ。

 

思えば、小学生の時の同級生のお母さんの名前が明らかに日本名ではなかったこともある。台湾か中国か、そのあたりの名前だと思う。

 

ネットでは韓国や中国を蔑んだ発言がたくさんあるけれど、「ねぇ、そう思うよね?」って同意を求めた先にいる人物が当事者だという可能性が大いにあるのだ。

BだってAを傷付けようと意図して言ったわけではないだろうけど、Aの事情を知っていたら絶対に言わなかった言葉がいくつもあっただろうと思う。

 

だってBの嫌う韓国人像にAは全然当てはまらない。

まあ『Aには言っちゃダメだけど、その他に人たちには別に言っていいよね』なんて理論もちゃんちゃらおかしいのだけど。

 

ネットの誹謗中傷は「それを自分の大事な人にも同じように言えるのか」という考えがあれば8割は無くなるんじゃないかと私は思っている。

 

考え方を変えろという意味ではなく、この考えが頭の隅にでもあれば、同じ主張でも言葉尻やワードのチョイスが大きく変わると思うからだ。『言論の自由』だ『表現の自由』だという人もいるが、主張と暴言は違う。

 

私も割とハッキリとした好き嫌いがいくつもある人間だから、今回の友人のカミングアウトを受けて、ネットの世界だけじゃない、いつ何時もこの考えを忘れずにいようと思った。

 

自分の考えを明らかにすることで、誰かを傷付けたいわけじゃないのだから。