【乳がんダイアリー 矢方美紀 2020 夢をあきらめたくない】
お風呂から上がってチャンネルを回すと偶然やっていた番組だ。深夜帯にも関わらずぐわっと引き込まれて、そのまま最後まで見てしまった。
矢方美紀さん、元SKE48。乳がんであったこと、左胸を全摘出したことを公表した時に話題になったので、知っている人もいるかと思う。
『乳がん』に関するドキュメンタリーはたくさんあって、私もいくつか見たことがある。だけど、そのどれもを覚えていなかったりする。
【乳がんダイアリー】が私の心に響いたのは、乳がんの手術をして、日常の生活に戻った後の姿が描かれていたからだと思う。知っていなくちゃいけないだろう知らないことが沢山あった。
乳がんの治療は10年
ガンは手術をして「はい、終わり」とはいかない。抗がん剤治療や再発防止の期間がある。
矢方美紀さんは社会活動(働きながら)をしながら、放射線治療や抗ガン治療に通われていた。
ガンの中でも乳がんや子宮頸がんは女性特有のもので、女性ホルモンが大きく関わっている。
そのため、治療としては女性ホルモンの値が高くならない薬を服用することとなるのだけど、乳がんの場合その服用期間は10年だそうだ。薬にはホットフラッシュや憂鬱といった副作用もある。
まず10年という時間の長さにビックリした。
そして何より、日本人女性の9人に1人が生涯のうちに乳がんを経験すると言われている現代で、【ホルモン剤を飲んでいる間は妊娠が望めない】ということは女性全員が知っておくべきことだと私は思った。
”だいたひかる”さん(45歳)がガン治療をストップし妊活をすると発表されたのは、まだ記憶に新しい。
このドキュメンタリーを見るまで、乳がんの治療がそれほど長いものだと思っていなかったから、何よりもまず治療をすべきだろうと思っていた。年齢的なことから数年の期間を惜しんでいるのだろうと思っていた。
だれど、そうじゃない。乳がんのホルモン治療は10年なのだ。だいたひかるさんの年齢を考えると、乳がんの治療を続けることは、イコール妊娠・出産を諦めることなのだと知った。
矢方美紀さんのこの言葉も忘れられない。
『10年後、自分が生きていたとして、ガンを克服できたとして、その時に自分の体は妊娠できる体に戻っているのだろうか。』
ガン治療に入る前に【卵子凍結】という方法もある。
だけどこれは高額で、治療も続いていくから治療費も捻出しなくちゃ、治療で仕事を休まざる得ない日だってきっとある、20代半ばで貯金だってそんなに作れていない、という理由から矢方美紀さんはすごく悩んだそうだ。
結果、彼女は卵子凍結を行わないことを選んだ。
「10年後自分はいないかもしれないし、その時に未来だけが残っていても…。今は何よりもまず治療に専念しようと思った」と語られている。
ホルモンに起因する病気は、卵子凍結や精子バンクなどに保険が効く医療保障があれば良いのになと思った。
ドキュメンタリーの中で1番記憶に残っているのは、オーディションが上手くいかず「2年前はこんなことで悩むと思っていなかった」と泣く姿である。
この言葉に、ネガティブな意味だけでなく、生きるか死ぬかじゃなくて仕事で悩めるなんて…という前向きな意味も含まれているのだと知った時、何故だか私までも涙が出そうになった。
不安も期待も、何というかめちゃくちゃリアルだ。
乳がんに関するたくさんの学びと、矢方美紀さんの姿勢に『生きる』を考えさせられる、見入ってしまうドキュメンタリーだった。学生の教材で使ったら良いのに。
一応、NHKオンデマンドで110円(単品)であるので良ければ是非。
価格:1,540円 |